研究レポート
体脂肪になりにくい
中鎖脂肪酸
偏食、運動不足、喫煙をはじめとする生活習慣が原因とされる生活習慣病。その起点とされているのが肥満です。肥満は体脂肪が過剰に蓄積されている状態を指します。ただし、食品から摂取する脂肪酸の中には、脂肪として蓄積されにくいものがあります。それが「中鎖脂肪酸」です。そのような中鎖脂肪酸の特長についてご紹介します。
研究レポート
「肥満」は深刻な病気に連鎖する
- 「肥満」は、疾病を意味するものではありませんが、上述の通り、肥満を原因として生活習慣病を引き起こすことがあります。さらに、肥満の中でも、内臓脂肪蓄積による複合病態である「メタボリックシンドローム(メタボ)」というものがあります。メタボは内臓脂肪症候群とも呼ばれ、内臓脂肪の蓄積によって、高血糖、血圧上昇、血中コレステロール・中性脂肪増加などを引き起こし、それらの異常がいくつも重なると、動脈硬化による心臓・脳血管疾患から心不全や脳虚血といった命にかかわる重篤な病気を引き起こすリスクを高める可能性があります。
「肥満」や「メタボ」は、必要以上のカロリーを摂取し、体脂肪として蓄積された結果、摂取した栄養が正常範囲内で代謝されないことにより起こります。改善のために必要なことは、食生活を改めて摂取するカロリーや栄養成分等を適正にすること。そして、運動等の身体活動により、体脂肪や体重を減少させることです。
摂取カロリーを減らそうとする際に、注目されることが多いのが「あぶら」です。あぶらは他の栄養素に比べて重量当たりのカロリーが大きいため、摂取量を減らそうと考えがち。しかし、極端にあぶらを減らすと、皮膚の弾力や、身体の潤滑油としての働きまで損なってしまうことになりかねません。
そんなときに役立つのが、一般的な油と比べて分解されやすく、短時間でエネルギーになる「中鎖脂肪酸」なのです。
一般的な油に含まれる脂肪酸とは異なる中鎖脂肪酸
- 油の主成分である「脂肪酸」は、分子が鎖状につながった構造をしており、その「長さ」で分類することができます。一般的な油に含まれている脂肪酸は分子の鎖が長いため「長鎖脂肪酸」と呼ばれています。これに対して、鎖の長さがその約半分の脂肪酸を「中鎖脂肪酸」と呼びます。中鎖脂肪酸はココナッツオイルに約60%含まれているほか、母乳や牛乳にも含まれています。
中鎖脂肪酸はエネルギーとしてすばやく分解される
- 一般的な油に含まれる長鎖脂肪酸は、小腸で消化・吸収されたあと、リンパ管や静脈を通って脂肪組織や筋肉、肝臓に運ばれ、必要に応じて分解・貯蔵されます。これに対して、中鎖脂肪酸は構造が異なるため、小腸から門脈を経由して直接肝臓に入っていきます。そして肝臓ですばやく分解され、短時間でエネルギーになります。中鎖脂肪酸が分解される時間は長鎖脂肪酸の約4倍も速く、脂肪として蓄積されにくいのです。
中鎖脂肪酸は体脂肪になりにくい!
- 中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と比べ、エネルギーとしてすばやく分解され、体脂肪が減少することがわかりました。
肥満気味の人に中鎖脂肪酸を11%程度含む食用油を含む食事を12週間摂取してもらった実験の結果、体脂肪と体重が減少しました。
このグラフは、過体重の人や肥満の人に中鎖脂肪酸を11%程度含む食用油を14g/日含む食事を12週間摂取してもらい、一般的な油(長鎖脂肪酸油)を摂った人と比較した実験結果です。中鎖脂肪酸を11%程度含む食用油を摂った方が、体脂肪と体重が減少したのです。
内臓脂肪が減少し、ウエストはより細くなった!
- また、体脂肪の中でも内臓脂肪が減少しており、それとともにメタボの判断指標とされるウエストも一層細くなっていたのです。
さらに、CTスキャンによる皮下脂肪や内臓脂肪の面積でも減少が確認されました。一般的な油(長鎖脂肪酸油)から、中鎖脂肪酸を11%程度含む食用油に替えて、12週間使用した方は、試験終了時に内蔵脂肪の減少が認められました。